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突き抜けた面白さ~森絵都『無限大ガール』感想~

本日は、こちら。



内容紹介
こうと決めたら猪突猛進!
眩しいぐらいまっすぐな高校生女子が大活躍する、爽やかで甘酸っぱい青春小説の短編。

高校二年生の相川早奈(あいかわ・さな)は「日替わりハケン部員」。
きょうはテニス部、あすは水泳部、ソフトボール部、園芸部に写真部……。
頼まれれば、臨時の助っ人として参加する。
去秋、重要な試合を翌日に控え、レギュラーが捻挫したバレー部の友達に泣きつかれたのがきっかけだった。
父親の長身と母親の器用さを受け継ぎ、運動神経に恵まれた早奈は以来、ひっきりなしにくる依頼に喜んでこたえ、〝ハケン〟を楽しんでいた。

次に早奈に舞い込んだのは、演劇部部長からのSOS。
10月末の文化祭でミュージカルを上演するのに、主演女優が演出家ともめて急遽降板し、代役をと懇願する。
その演出家こそ、昨夏、早奈がたった4カ月だけの交際でフラれた元カレの先輩・藤見(ふじみ)だった!
失恋の痛みを引きずる早奈は引き受けるか、悩むが……。

著者について
森 絵都(もり・えと)
東京都生まれ、早稲田大学卒。1990年、『リズム』で第31回講談社児童文学新人賞を受賞してデビュー。1995年、『宇宙のみなしご』で第33回野間児童文芸新人賞と第42回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞するなど、児童文学の世界で高く評価され、数々の賞を手にし、人気作家となった。中でも水泳の飛び込み競技を題材にした青春小説の長編『DIVE!!』(2000~)は4冊が刊行される人気シリーズとなった。初めて一般向け分野に挑戦した長編『永遠の出口』(2003)がベストセラーになり、2006年、短編集『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞を受賞。2017年には、塾経営者の半生を描いた長編『みかづき』で中央公論文芸賞を受賞した。他の作品に1995年に起きた阪神・淡路大震災の直前を描いた長編『この女』、『漁師の愛人』『クラスメイツ』など。Kindle Singlesには「最後は臼が笑う」がある。


これは、何とも痛快な作品だった。

自分というものがよく分からない女の子が、流されながらも自分探しをしていく。
しかしその中で思いも寄らぬ展開があり、予想外の方向へ話は転がっていく。
何とも、リアリティーを超えた、突き抜けた面白さがあった。

ぐいぐいと読者を引っ張っていく力。
強引だなと思いながら、主人公と共に呑み込まれていく。
こういう作品を書けるのは、自己信頼なのか、勢いなのか、あるいはもっと別な、例えばサービス精神なのか。

疾走感のある作品だった。

松宮宏『まぼろしのパン屋』感想

さて。
今夜は、こちらを読んだ。



内容紹介
朝から妻に小言を言われ、満員電車の席とり合戦に力を使い果たす高橋は、どこにでもいるサラリーマン。
しかし会社の開発事業が頓挫して責任者が左遷され、ところてん式に出世。
何が議題かもわからない会議に出席する日々が始まった。
そんなある日、見知らぬ老女にパンをもらったことから人生が動き出し……。
他、神戸の焼肉、姫路おでんなど食べ物をめぐる、ちょっと不思議な物語三篇。
【解説】大森望

内容(「BOOK」データベースより)
朝から妻に小言を言われ、満員電車の席とり合戦に力を使い果たす高橋は、どこにでもいるサラリーマン。
しかし会社の開発事業が頓挫して責任者が左遷され、ところてん式に出世。
何が議題かもわからない会議に出席する日々が始まった。
そんなある日、見知らぬ老女にパンをもらったことから人生が動き出し…。
他、神戸の焼肉、姫路おでんなど食べ物をめぐる、ちょっと不思議な物語三篇。


確かに不思議な物語だった。

3つの短編が納められているが、特に表題作の「まぼろしのパン屋」が、食べ物的にも好きだ。
誰しも一度はあるのではないだろうか、「パン屋さんになる」ことに。
私など、未だにふっと「今からでもパン屋になれないだろうか」と思ってしまう瞬間がある。
憧れの職業の一つだ。

ビジネス小説のような、ユーモア小説のような、加えてファンタジー要素は確実にあって。
心温まる物語の味わいに、内海隆一郎を思い出した。
テイストは異なるかもしれないが、巻末の解説にあった言葉を借りれば「人情噺」という点では共通する。

「不思議な物語」と書いたが、「不思議」の意味はひととおりでない。
一つにはファンタジー的という普通の意味だが、もう一つには、ちょっと信じられないような展開が続いても、「いやいやそううまくはいかないだろう」とはなぜか思わない。
不思議な説得力がある。

3編は、それぞれ別の世界、別種のキャラクターたちが描かれ、いずれも実話か体験談かと思えるリアリティーに富んでいる。
この創作力はどこから来ているのだろう。
これまで知らなかったが、面白い作家さんだ。

高野史緒『グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行』を読んで

久々の更新だ。
久々すぎる更新だ。
今日の昼間、ある人から、自分は一日一冊、本を読むことを戒にしていて、もう二年ぐらいになる、と言われた。
つまりは何事かを成そうとするならば、まずその程度の努力をしてみせよ、というわけだ。
……なるほど。
というわけで、本日はキンドルにてこちらを読んだ。



内容紹介
ある夏の夕、かの有名な飛行船「ツェッペリン号」が現代日本の空を悠然と航行する――ありそうもないおとぎ話を、精密且つ繊細に描いてみせるSF中編。

女子高校生・夏紀は、母親の生まれ故郷である土浦を訪れた。約90年前の1929年8月、当時、世界最大の飛行船だった「グラーフ・ツェッペリン号」は史上初の世界一周飛行の途中、ここ土浦にある霞ヶ浦海軍航空隊基地に寄港した。

ところが、夏紀には小学生の頃、祖母の葬儀のために来た当地で、確かに巨大な飛行船を見た記憶があった。その話を聞いた従兄の登志夫は、量子コンピュータに接続した拡張現実装置を夏紀に装着させ、もう一度現れるはずのツェッペリン号を追跡しようとするが……

時間はまっすぐに流れるのか? 真実は常にひとつなのか? 刺激的な思索に満ちた野心作。

著者について
高野 史緒(たかの・ふみお)
1966年、茨城県土浦市生まれ。お茶の水女子大学人文科学研究科修士課程終了。1995年、第6回日本ファンタジーノベル大賞最終選考作『ムジカ・マキーナ』でデビュー。2012年、『カラマーゾフの妹』で第58回江戸川乱歩賞を受賞。主な長編作品に、『カント・アンジェリコ』『赤い星』『翼竜館の宝石商人』等がある。Kindle Singles ではジョン・グリビン著『ビッグバンとインフレーション:世界一短い最新宇宙論入門』を翻訳している。


この著者の作品を読むのは初めてだった。
まず文体が、これまで私の読んだことのないタイプのもので、何というか、全編がポエムのような感じと言おうか。
読んでいて心地よい、ふわふわとした感覚がずっと続いていく。
著者のつくり出す不思議な世界をしばしたゆたうのは、悪くないひとときだった。
みずみずしくて、若い人が書いたのかなと思いきや、私と同年代であることが分かった。
うーむ。
やはり作家という人種はすごいものだ。

さて明日以降もこのにわか読書熱は続くや否や。
乞う、ご期待。

人気漫画家が手の内を明かした『荒木飛呂彦の漫画術』

昨日は、TOEICの試験日だったこともあり、疲れてしまって更新できなかった(しなかった)。

それはさておき、本日、『荒木飛呂彦漫画術』を読了。

ジャンルは何であれ、何らかの作品をつくろうと志す人にとっては読んで損のない一冊。

文章は読みやすく、知的で、しかも具体的。

「キャラクター」「ストーリー」「世界観」「テーマ」、この四つが大事、というのはこと漫画のみにとどまらない。

実はかの有名な『ジョジョの奇妙な冒険』を読んだことがないのだが、少し読んでみたくなった。

特に、漫画家だという岸部露伴の出てくるくだり。

作家の出てくる小説や映画などが好きなのだが、「作家」の中には緩やかに漫画家も含まれる。

しかし、ここまで手の内を明かせるというのは相当な自信の表れだろう。

かつ、漫画という世界への恩返し、および後に続く者への慈愛。

これを読んだからといって皆が人気漫画家になれるわけではないが、でも、ヒントをつかんで自らのものとして生かすことは誰にも可能だ。

私もまたその一人でありたい。



テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

だらだらとドラマ三昧な一日

今日は、本当にだらだらと、ほとんど何もせずに過ごしてしまった。

読むべき本や、勉強せねばならないことなど、もろもろありながら、本当に何もせずに。

やったことと言えば、録りためてあったドラマでまだ観ていなかったものを、観るともなくだらだら観たぐらい。

夕方になって、少しだけ仕事をしたことはしたが、それだけでは、意義ある一日だったとはとうてい言えない。

ちなみに観たのは、初回から観ないままためてあった「ハラスメントゲーム」など。

何かにつけて「ハラスメント」を叫ぶ世知辛い世の中を憂いつつ、ドラマドラマとして意外と楽しめる。

広瀬アリスが好きなので、それも個人的に加点ポイントではある。

朝ドラ「わろてんか」で漫才師を演じているのを見て好きになった。

美人だが気取らない感じが、牽かれる。

少し前にやっていた「探偵が早すぎる」の女子大生役もよかった。

たぶん私はドラマを観すぎ。自覚はある。

今日一日をだらだらと過ごしてしまったことについては反省すべきだが、しかし、ここのところ週末もずっと忙しかったし、たまにはこんなダメな一日があってもいいんんじゃないか、と自分に甘く捉えたい気持ちもある。

そう、たまには。

また明日から頑張れば。

仕切り直せる、という意味で、夜があり朝が来るというこの地球における生活のサイクルは、ありがたいものだと思う。



テーマ:テレビドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

同じ作品でありながら別の作品でもあるという不思議――小説版『嘘を愛する女』を読んで

今朝(11月17日)、小説『嘘を愛する女』を読み終えた。

実は、小説より先に、映画も観ていた。

映画「嘘を愛する女」は、公開時から気になっていた作品だったが、なかなか観られず、1カ月余り前に、ようやくDVDで観ることができた。

恋人だと思っていた相手が、実は誰だか分からない、素性の知れない人物だったというのは、とても恐ろしく、寂しく、悲しい。

そこにどんな真相が隠されているのかを知りたくて、観た。

どうか嫌な終わり方でないようにと願いながら、半ばそれも覚悟しながら、観た。

観終えて、何というか、……ネタバレになりたくないので多くは語らないが、とても心に残るラストシーンだった。

そして、私はどうやってその存在を知ったのか、もはや思い出せないのだが、この映画の小説版があることを知り、かつ、そのキンドル版が0円であるのを発見して、即、購入した。

映画を観てから小説を読むのは初めてのことだったが、この映画の世界をもう少し味わってみたい、というのがその動機だった。

少しずつ、読んだ。

小説版の醍醐味は、何と言ってもその「素性の知れない人物」の側の心情までが詳細に語られていたことだ。

堪能した。

映画とは設定や展開などで多少異なる点もあり、映画をそのままなぞるのでなく、小説は小説として、同じ作品でありながらまた一つ別の作品ともなっていて、二重に楽しむことができた。

岡部えつ、という名前は聞いたことがあったが、作品を読むのは初めてだった。

失礼を承知で言えば、うまい、と思った。

さすがプロ。

小説家って、すごい。

ほかの作品も、読んでみたくなった。



テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

大石静天才説――ドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」に寄せて

ドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」を、けっこう熱心に観ている。

やはり、大石静(脚本の)は天才かもしれない。

あんな、天使の皮をかぶった悪魔みたいなキャラを、よく思いつくものだ。(←小池徹平の演じている若者を指す)

それでなくても(大石静作品のようなめくるめく展開とは限らずとも)、作家の出てくる作品は、小説であれ映像作品であれ、何か心惹かれてしまう。

作中で小説家・間宮真司が書こうとしている作品も、ちょっと読んでみたい。

ゲイで天涯孤独の(だったかな?)建築家が、異国の地で父親と巡り会い、互いに親子と気づかぬまま愛し合う、みたいな。

そんなのだけでも、そんなふうに作中に出てくる架空のストーリーだけでも、十分に面白そうで、ここでもやはり、よく思いつくなあと感心せずにいられない。

脚本家とか小説家は、なんでそんなに面白いことをどんどん思いつけるのだろうか。

素質もあるのだろうが、努力の賜物でもあるのだろう、と思う。

尊敬。

そして、やっぱり私も書きたい、という思いが強まる。

書きたいものがどんどん思いついてしまう。実は。

一つ一つ、形にしていきたい。



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瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』を読んで

瀬尾まいこそして、バトンは渡された』を読了。

瀬尾まいこは以前から好きな作家の一人で、すべてではないけれども、わりと多くの作品を読んでいる。
中でも、初めて読んだ『天国はまだ遠く』が印象に残っている。
数多く映画化されている作家の一人だ。

好きな作家といいつつ、作品によっては「どうかな?」と思うものもあったりして、今回も、「どんなもんだろうかな……」と思いながら読み始めたのだったが、非常にみずみずしく、あたたかく、この作家ならではの味わいを堪能できた。

最近、テレビドラマで、「花より男子」の続編に当たるような作品を観ていて、あまり心に響くものを感じず、自分も感性がかなり鈍っているのかな、と残念に感じていたのだが、この小説を読んでいて、しっかり高校生の主人公に感情移入できたので、少しほっとした。
ある男子生徒に対して、ときめきを感じたり、一緒にいたいと思ったりする、その感覚をリアルに共有できたので、「おお、そこまで枯れてはいなかった」と(笑)、自己確認できた次第。

それは余談だが、複雑な生い立ちで、結果的に父親を3人も持つことになった主人公の、ものすごく愛された、ものすごく幸せな日々を描いた、そう、本当にこの作家でないと書けなかった作品だと思う。

主人公と周りの人々との軽妙なやり取りはコミカルで、それを追っていくだけでも楽しい。

オススメしたい作品。





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原田マハ『スイート・ホーム』を読んで

原田マハの作品を、恥ずかしながら初めて読んだ。
書店の店頭で手に取って、どうしても読みたい!と思って。
夜、寝る前に少しずつ、大切に、楽しみながら。

手に取った時に予想した通り、素晴らしかった。
否、予想した以上に。

悪人が一人も出てこない。
あったかい、あったかい人たち。
あったかい、物語。

こういう小説こそが書かれるべきだ、と思う。
オススメ。



内容紹介

幸せのレシピ。
隠し味は、誰かを大切に想う気持ち――。
うつくしい高台の街にある小さな洋菓子店で繰り広げられる、
愛に満ちた家族の物語。

香田陽皆(こうだ・ひな)は、雑貨店に勤める引っ込み思案な二十八歳。
地元で愛される小さな洋菓子店「スイート・ホーム」を営む、腕利きだけれど不器用なパティシエの父、
明るい「看板娘」の母、華やかで積極的な性格の妹との四人暮らしだ。
ある男性に恋心を抱いている陽皆だが、なかなか想いを告げられず……。(「スイート・ホーム」)
料理研究家の未来と年下のスイーツ男子・辰野との切ない恋の行方(「あしたのレシピ」)、
香田一家といっしょに暮らしはじめた〝いっこおばちゃん〟が見舞われた思いがけない出来事(「希望のギフト」)など、
稀代のストーリーテラーが紡ぎあげる心温まる連作短編集

どんなに疲れて帰ってきても、仕事でうまくいかないことがあっても、
ここまで来れば、もう大丈夫。駅からバスに乗って、ふたつ目のバス停で
下りて、色づき始めた街路樹を眺めながら、甘い香りのする場所へと向かう。
そこでは、おいしいスイーツと、なごやかなパティシエ一家が、
私の到着を待っていてくれる。(本文より)
さりげない日常の中に潜む幸せを掬い上げた、心温まる連作短篇集。


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本日のランチ&『英検1級合格マップ』を読んで

さて、すっかりカフェづいてしまった(笑)私、この土曜日のランチは、これもまた初めて利用したのだったが、エクセルシオールにて。

初めてのエクセルシオール

チキンと卵のサンドイッチに、飲み物は豆乳ラテ
スタバのような妙なハードル感は薄かったものの、しかし、最初に「テイクアウトで」というのを言いそびれた結果、気づけば「当然ながら店内でお召し上がりですよね」的な空気に呑みこまれ、うっ、テイクアウトし損ねた……。
しかしまあ、混雑した店内で人間観察にいそしむのもまた一興ではあったので、よしとする。
次回から、「テイクアウトで!」というのを早めに宣言せん、と誓うなり。

それはさておき、本日、この本を読んだ。



英検というものを受けたことがなく、TOEICでぎりぎり890点の人間が、いきなり1級を目指すのはかなり無謀、とは分かっている。
しかし、目指すのは自由。
努力するのも自由。
ともかく、この一冊に目を通してみて、改めて厳しさを感じたものの、同時に、きちんと手順を踏んで戦略的に努力すれば、かなわぬ夢でもないかもしれない、と思えてきた。
まずは語彙を増やし、英作文、スピーチといったアウトプットの研鑽が必要。
そして過去問も欠かせない。

やはり、英語で自分の考えを伝えたり、相手の話を理解したり、深い議論などができるようになりたい、という思いを強く持っているので、そのためにも、挑戦してみたい。
よし。
改めて、気合。

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