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萩尾望都『ピアリス』感想

漫画家の萩尾望都(はぎお・もと)が、過去にペンネームを用いて執筆したという小説『ピアリス』を読了した。



内容紹介

萩尾望都が90年代に「SF作家・木下司」の名前で執筆・発表した
幻のSF小説『ピアリス』を初単行本化!

小説執筆と同時に描いた貴重な挿し絵イラストも40点掲載。

【巻末特別企画】
萩尾望都インタビュー「SF作家・木下司は私でした」

雑誌「The Sneaker Special」(角川書店/※1995年廃刊)
1994年春号・夏号・秋号・冬号に発表。全4回連載。


もともと萩尾望都は、中学生の頃から20代前半頃まで、ほとんど心酔というか崇拝していた漫画家さんだったこともあり、懐かしさも手伝って、手に取った。
読んでみて、確かにプロの小説家としては文章に稚拙さが感じられなくもなかったが、しかし、やはり「さすが」と言うべき世界観に圧倒された。
どことなく、『闇の左手』などで知られるル・グウィンの作風も想起された。
萩尾ファンにはもちろん、ル・グウィンのファンにも読んでみてほしい作品だ。

ただ、読み終えて初めて知ったのだが、これは、連載していた雑誌が休刊になってしまったためか、未完のままで止まっているのだ。
巻末の著者インタビューで、「このあと、こう展開するはず」的な内容が多少語られているところから想像の翼を広げるほかないが、ややフラストレーションが残ったことは否めない。

主人公二人は、けっこうなひどい目に遭い、特に男の子のほうが受ける暴力は、なかなかに手ひどい。
彼が癒されて何らかの幸福感を得られるところまで、何とか続きを描いてもらえないだろうかと、無理を承知で願わずにいられない。
ユーロと、ピアリス
静と、動。
未来が分かってしまう悲しさと、過去が視えてしまう哀しさと、その二つを掛け合わせることによって、奇跡的に何かよきもの、温かいもの、優しいものが生まれてくれるのではないか――そう期待して読んでいた。
そんなささやかなハッピーエンドを、本を閉じたあと、心の中で夢見ることのできる、夢見続けることのできる、作品だった。



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テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

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