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辻村深月『傲慢と善良』を読んで

辻村深月先生は、好きな作家の一人だ。
本日、『傲慢と善良』を読了。



内容紹介
婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。
その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。
生きていく痛みと苦しさ。その先にあるはずの幸せ──。
2018年本屋大賞『かがみの孤城』の著者が贈る、圧倒的な"恋愛"小説。

「人を好きになるってなんなんだろう」
「読み終わったあと、胸に迫るものがあった」
「生きていく中でのあらゆる悩みに答えてくれるような物語」

「この小説で時に自分を見失い、葛藤しながら、何かを選び取ろうとする真実と架と共に私たちもまた、地続きの自由へと一歩を踏み出すのだ」
――鳥飼茜さん(漫画家)

絶賛の声、続々。

とにかく、辻村先生の作品は、読み始めたら、ページをめくる手を止めることができない。
一気に読まずにはいられない。
どうなってしまうのか、どうなっているのか、どきどきしながら読み進め、いよいよ終盤に差しかかると、読み終えるのが惜しい気がして、ページをめくる速度をあえて遅くしてしまう。

後半部分で、ある写真館の話が出てくる。
そのくだりを読んでいて、あれ? これって前にどこかで聞いた話のような――と既視感を覚え、じきに思い出した。
そう、この写真館の話は、『青空と逃げる』にも出てきていた!
とても素敵な写真館およびそれにまつわる登場人物たちに、再び会うことができて、嬉しかった。
そんな、楽しいオマケ付き。

『朝が来る』は妊活がテーマだったが、今回は婚活。
妊活も、婚活も、当事者にしか分からない苦悩に満ちていて、それを丁寧に描き出してくれる辻村深月という作家の存在は大きく、その仕事は刮目すべきものだ。

読んでいて、心が痛むところも多かったが、特に後半部分は、心が解放されていく感じがあった。
人は、生きていける。
どれだけ失敗しても、どれだけ恥を塗り重ねても、そこからまた新しく、一歩を踏み出せる。
そして、結婚はきっと、よいものだ。
読んだら、結婚したくなる、かも。







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小手鞠るい『放課後の文章教室』を読んで

私は小説を書いている。
これまでに一度、とある文学賞で佳作を受賞したことがある。
年齢は50代。
普通ならここから小説家など目指さない。
でも私には書きたいことがある。
書かねばならないことがある。
だから書き続ける、つもり。

しかしいかんせん、我ながら下手だ。
少しでもうまくなりたい。
そう思い、手に取った一冊。

小手鞠るい『放課後の文章教室』


内容紹介
SNS、感想文など、文章について、若い読者からの質問に著者が答えます。文章読本の形をとりながら、人生論にも通じるエッセイ。

内容(「BOOK」データベースより)
若い読者からの「文章について」「書くことについて」の質問に答えます。ツイッター・メールから読書感想文まで、書くことの楽しさとコツを教えます。小学校高学年から。

著者について
小手鞠るい
1956年岡山県生まれ。1993年『おとぎ話』が海燕新人文学賞を受賞。さらに2005年『欲しいのは、あなただけ』(新潮文庫)で島清恋愛文学賞、2019年『ある晴れた夏の朝』で日本子どもの本研究会作品賞、原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん』(講談社)でボローニャ国際児童図書賞(09年)受賞。1992年に渡米、ニューヨーク州ウッドストック在住。主な作品に、『エンキョリレンアイ』『望月青果店』『思春期』『アップルソング』『優しいライオン やなせたかし先生からの贈り物』『見上げた空は青かった』『ある晴れた夏の朝』『星ちりばめたる旗』『炎の来歴』など。


読んでみて、いろいろ考えさせられた。
自分自身、小説を書く際に、あだやおろそかに言葉を選ばない努力はしていたつもりだったが、それでもやはり十分ではなかった。
そして、相手に何を伝えるにせよ、その根底には愛がなくてはならない。愛と尊敬と感謝(という言葉で書かれていたわけではないが、自分としての翻訳)。
書くことは、自分を書くことであり、自分の人生を書くことであり、自分の内面を明かすことである(これも自分なりの翻訳)。
分かっていたけれど分かっていなかったかもしれなかったことについて、再考を促された。
よい一冊だった。
何であれ、書きたいと思う人にはオススメ。

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