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小手鞠るい『放課後の文章教室』を読んで

私は小説を書いている。
これまでに一度、とある文学賞で佳作を受賞したことがある。
年齢は50代。
普通ならここから小説家など目指さない。
でも私には書きたいことがある。
書かねばならないことがある。
だから書き続ける、つもり。

しかしいかんせん、我ながら下手だ。
少しでもうまくなりたい。
そう思い、手に取った一冊。

小手鞠るい『放課後の文章教室』


内容紹介
SNS、感想文など、文章について、若い読者からの質問に著者が答えます。文章読本の形をとりながら、人生論にも通じるエッセイ。

内容(「BOOK」データベースより)
若い読者からの「文章について」「書くことについて」の質問に答えます。ツイッター・メールから読書感想文まで、書くことの楽しさとコツを教えます。小学校高学年から。

著者について
小手鞠るい
1956年岡山県生まれ。1993年『おとぎ話』が海燕新人文学賞を受賞。さらに2005年『欲しいのは、あなただけ』(新潮文庫)で島清恋愛文学賞、2019年『ある晴れた夏の朝』で日本子どもの本研究会作品賞、原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん』(講談社)でボローニャ国際児童図書賞(09年)受賞。1992年に渡米、ニューヨーク州ウッドストック在住。主な作品に、『エンキョリレンアイ』『望月青果店』『思春期』『アップルソング』『優しいライオン やなせたかし先生からの贈り物』『見上げた空は青かった』『ある晴れた夏の朝』『星ちりばめたる旗』『炎の来歴』など。


読んでみて、いろいろ考えさせられた。
自分自身、小説を書く際に、あだやおろそかに言葉を選ばない努力はしていたつもりだったが、それでもやはり十分ではなかった。
そして、相手に何を伝えるにせよ、その根底には愛がなくてはならない。愛と尊敬と感謝(という言葉で書かれていたわけではないが、自分としての翻訳)。
書くことは、自分を書くことであり、自分の人生を書くことであり、自分の内面を明かすことである(これも自分なりの翻訳)。
分かっていたけれど分かっていなかったかもしれなかったことについて、再考を促された。
よい一冊だった。
何であれ、書きたいと思う人にはオススメ。

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悪意に満ちた世界における「臼」~森絵都『最後は臼が笑う』感想~

とにかく、さっと読んでさっとブログを書いて、さっと寝よう。
そのために、短いものを。
そんな理由で選択したのがこちら。



内容紹介
とてもひねりの効いた、一筋縄ではいかない大人のための恋愛短編。
確かに女と男は〝出会う〟のだが、そこから先が尋常ではない。
幸せの形は人それぞれとは言うものの……。

ヒロインは公務員の桜子、39歳。
人生このかた、ろくでなしの悪い男にひっかかり続けてきた関西人。
妻子持ちに騙され、借金持ちには貢がされ、アブノーマルな性癖持ちにいたぶられる。
ところが、桜子は「ろくでなしや、あかん奴や言われとる男に限ってな、どっかしら可愛いとこを持っとるもんなんや」と公言し、好んで吸い寄せられていく。
高校時代からの友人の「私」は、悪弊の連鎖を断つべく有志を募り、「桜子の男運を変える会」まで結成したが、当人は我関せずだから、どうしようもない。

ところがある日、解散して早十年を数える会に、桜子から緊急招集がかかる。
「一分の隙もない完全な悪」にとうとう出会ってしまったのだという。
〝完全な悪〟とはいったい何者か?

著者について
森 絵都(もり・えと)
東京都生まれ、早稲田大学卒。1990年、『リズム』で第31回講談社児童文学新人賞を受賞してデビュー。1995年、『宇宙のみなしご』で第33回野間児童文芸新人賞と第42回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞するなど、児童文学の世界で高く評価され、数々の賞を手にし、人気作家となった。中でも水泳の飛び込み競技を題材にした青春小説の長編『DIVE!!』(2000~)は4冊が刊行される人気シリーズとなった。初めて一般向け分野に挑戦した長編『永遠の出口』(2003)がベストセラーになり、2006年、短編集『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞を受賞。2017年には、塾経営者の半生を描いた長編『みかづき』で中央公論文芸賞を受賞した。他の作品に1995年に起きた阪神・淡路大震災の直前を描いた長編『この女』、『漁師の愛人』『クラスメイツ』等がある。


これは、何とも。
正直、私は楽しめなかった。
痛快、と思えばいいのかもしれないが、そこに至るまでがつらい。
こんな嫌な人って、本当にいそう。
でも、いてほしくない。
最後に天誅がくだるにしても、悪意に満ちた人間像をわざわざフィクションでまで読まなくていいかな。
現実世界に山のようにいるし、自分にだってあるし。
――まあ、しかし、「臼」だな。
悪意に満ちた世界で、「臼」であること、「臼」を見つけること、みんなで「臼」になること。
そういう教訓を得た、としておく。

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